薪ストーブを長持ちさせる「慣らし焚き」の手順
朝晩の冷え込みが深まり、いよいよ薪ストーブの出番!薪ストーブシーズンを気持ちよくスタートさせるための準備は万全ですか?
薪ストーブの設置を終えたばかりの方も、長いオフシーズンを越えた方も、火を入れる前にぜひ知っておいていただきたい大切な手順があります。
それが、薪ストーブの寿命を左右する「慣らし焚き(慣らし運転)」です。
「いきなり着火すればいいのでは?」と思うかもしれませんが、慣らし焚きは、薪ストーブを長く、安全に、そして快適に使い続けるための愛情表現(笑)。
今回は、「慣らし焚きとは何か?」「なぜ必要なのか?」、そして「失敗しない具体的な手順」を解説します。

「慣らし焚き」ってなに?
慣らし焚きとは、薪ストーブに火入れをする際、いきなり高温・高火力にせずに、低い温度から徐々に本体を熱に慣れさせる運転のことです。車やバイクの「慣らし運転」と同じ目的を持ちます。
なぜ慣らし焚きが必要なのか?
慣らし焚きというひと手間をかけることには、ストーブの「安全性の確保」と「寿命の延長」という、重要な目的があります。
●本体(鋳物・鋼板)の破損を防ぐ
薪ストーブの多くは、鋳物(いもの)や厚い鋼板といった金属でできています。
金属は熱が加わると膨張しますが、急激に高温になると、本体にひび割れや歪みが発生するリスクが高まります。
慣らし焚きでゆっくりと熱を加え、温度変化に慣れさせることで、熱膨張を穏やかにし、ストーブ本体を損傷から守ります。
●保護塗料や油分を「焼き切る」(新品時のみ)
新品のストーブの表面には、製造時に付着した油分や、高温に耐える保護塗料が塗布されています。
初めて火を入れると、この塗料が熱で硬化(キュアリング)し、独特の嫌な匂いや白い煙が発生。
慣らし焚きで低温から時間をかけて焼き切ることで、臭いや煙を最小限に抑え、塗料をしっかり定着させることができるのです。
【注意!】この匂いや煙は無害ですが、室内に充満させないよう、必ず換気を行いましょう。
●各パーツを熱に馴染ませる
熱膨張によって、ドアの開閉や空気調整ダンパーの操作に、一時的な変化が生じることがあります。
慣らし焚きは、ガスケットや扉などの可動部分に熱を馴染ませ、ストーブ本来の性能を引き出すという役割もあります。

慣らし焚きを行うタイミング
慣らし焚きは、いきなり高温で焚くと金属に急激な熱変化が起こりやすく、故障の原因になるために必要です。タイミングは、次のような時でしょう。
- ・新品の薪ストーブに初めて火を入れるとき(最も重要!)
- ・シーズン初め(数ヶ月間、ストーブ本体が冷え切っている状態から再始動するとき)
慣らし焚きを成功させるための手順
慣らし焚きは、「低い温度(約150〜200℃)で短時間燃やし、完全に冷ます」を繰り返すのが基本です。
【ステップ1 事前準備と設定】
●ストーブ温度計の設置
天板の適切な位置に必ず設置してください。慣らし焚きで最も重要なのは温度の管理です。
●換気
匂いや煙を排出するため、室内の換気扇は止め、窓や給気口を大きく開けておきましょう。
●薪の準備
焚き付け用の細い薪と、中くらいの乾燥した薪のみを用意します。太い薪は使いません。
【ステップ2 低温・短時間で着火】
●薪は少なめに
通常の火入れの半分以下の量で薪を組みます。(トップダウン方式が煙が少なくおすすめです。)
●着火後の火力調整
火が安定したら、空気調整ダンパーを絞り、ストーブ温度計の表示が150℃~200℃(推奨温度は機種によって異なります。必ず取扱説明書をご確認ください)を超えないように細心の注意を払って調整します。
●燃焼時間
この低温運転を1~2時間程度続けます。
【ステップ3 完全に冷ます】
●追加投入はしない
燃焼時間が来たら、追加の薪を入れずに自然に燃え尽きるのを待ちます。
●完全冷却
薪が燃え尽き、ストーブ本体の温度が完全に冷え切るまで(数時間~半日)、次の火入れを行わず放置します。
【ステップ4 繰り返し実施】
●新品のストーブの場合
この手順を4~5回繰り返すのが一般的です。回を重ねるごとに、徐々に最高温度を上げることも可能ですが、急激な加熱は絶対に避けてください。
●シーズン初めの場合
1~2回、低温で慎重に火入れを行うことで、冷え切った本体を熱に優しく慣れさせることができます。
まとめ
慣らし焚きは、薪ストーブの故障リスクを大幅に減らし、独特の匂いを効率的に解消するための、言わば「儀式」です。
このひと手間を丁寧に行うことで、あなたの薪ストーブは最高のコンディションで冬を迎えられます。
きっとこれから何年も、心地よい温もりと炎の揺らぎを提供してくれるでしょう。
この記事を書いたのは…
“薪ストーブのある暮らし”の魅力をお届けする佐藤です。
